1961年(昭和36年)、小学生から中学生になった頃、京都下京区の実家の周りには映画館が4軒あった。一番近かったのが中央劇場で、小林明の渡り鳥シリーズや加山雄三の若大将シリーズを見た記憶がある。南北に走る大宮通りを七条から少し南に下がった東には、宝座があり主に東映の時代劇が掛かっていた。さらに、かつて遊郭として有名であった島原には、島原映劇と島原国際の2軒の映画館があった。島原映劇では怪人20面相シリーズを見た。
その頃、友達M君の家は島原国際映画館の中にあった。遊びに行くと受付をしていたおばちゃんが「裏にいるから、入って」と言うフリーパス状態であった。西部劇や戦争映画の洋画が上映されていたが、その中で白黒の作品で、戦闘機パイロットを描いた映画が、テーマミュージックと共に強く印象に残った。「撃墜王アフリカの星」である。
後年飛行機の雑誌やプラモデルを見ていて、この映画の機体がドイツのメッサーシュミットBF109であることを知った。
バランスの取れた小柄な機体にダイムラーベンツのエンジンを搭載、速度や上昇力・機動力に優れイギリス空軍の戦闘機スピットファイア―やハリケーンと死闘を繰り広げた。スマートな機体に不釣り合いなドイツ的で武骨な風防がまた魅力的である。アメリカの航空映画「メンフィスべル」ではドイツの工業都市へ爆撃に向かうのボーイングB17に襲い掛かるBF109と恐怖に慄く爆撃機乗組員の姿が映し出されていた。
さて映画の方は、規則は守らないが技量は優秀な若者マルセイユが同僚の死を乗り越えて158機の敵機を撃墜しエースパイロットに成長して行くストーリーである。美しい女性教師との恋が添えられている。最後は北アフリカの砂漠の上空で、愛機のエンジントラブルにみまわれて機体から脱出するがパラシュートが開かず死亡する。撃墜機数が描かれた垂直尾翼の破片と、開かなかったパラシュートとマルセイユの上を砂嵐が吹き抜けていく。テーマ音楽「アフリカの星のボレロ」が美しく切なく流れる。
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