2024年の正月1日、いつも初詣に出掛ける神社でおみくじを引いたところ人生で初めて”凶”を引き当ててしまった。悪いことが起きなければよいがと思っていたら、夕方に能登半島で大地震が発生した。続く2日には羽田空港で日本航空と海上保安庁の航空機が衝突炎上する事故が発生してしまった。地震で被災されこの寒さの中での避難生活を強いられている被災者の皆様にはお見舞い申し上げるとともに、震災で亡くなられた方や事故で殉職された5名の海上保安庁職員の方には心よりご冥福をお祈りしたいと思っている。
事故を巡ってはいろいろな立場の人から原因究明の意見が述べられている。今のところは、海上保安庁機が管制官の指示を誤解して滑走路に進入し、着陸許可を得ていたJAL機と衝突したことは事実であろう。
この事故では燃え盛る機体から客室乗務員は的確な判断と指示で乗員乗客379名全員を脱出させ、機長は機内を見回り最後に脱出すると言う素晴らしい仕事をして世界中から称賛されている。
さてここからは、少し異なった視点からこの事故を見てみようと思う。通常旅客機は着陸の際に、管制塔(タワー)から「JAL516 Clear to Land RWY34R Wind 330/8」「日本航空516便 滑走路34Rに着陸支障ありません。風は330度風向から8ノット吹いています」と言う”着陸許可”を受けて着陸する。この着陸許可というのは命令ではなく、滑走路には異常は無く、他の飛行機もいない、パイロットが安全に着陸できると判断したら着陸してもOKですよと言う意味である。着陸の最終判断は機長に委ねられている。
夜間に大きな空港に着陸する寸前、操縦室からはこのように見える。左側に進入角指示灯と呼ばれる4個の赤いライトがある。その横の滑走路上に白くペイントされた長方形の四角形があるが、これは目標点標識と呼ばれパイロットはここに車輪を接地させるように機体をコントロールする。画像の地点からであれば、ゴーアランド(着陸復行)は安全に実施できる。
海上保安庁機は4個の赤橙の付近から緑の誘導路中心線灯に従って滑走路に進入し停止した。このタイミングで管制塔からの着陸許可を得ていた516便のパイロットは滑走路上には他機はいないと思っている。私も現役の頃はそう思っていた。この時516便のパイロットに海上保安庁機は見えなかったのであろうか?
516便のA350機にはヘッドアップディスプレイと言う装置が設置されている。このため前方視界はさらに妨げられている。
今後、事故防止の観点から様々な調査が行われるが、着陸寸前の516便から海上保安庁機が見えたか否かは原因究明のポイントの一つになるだろう。現在の日本では何か事故があった場合に機長は、かなり厳しい事情聴取を受けることになっている。