20年程前、2000年頃はエンジンを4基備えたボーイング747-400型が国際線の主力機だった。現在では燃料効率が悪いと言う事で日本の航空会社では一部の貨物会社を除いてはすべて退役している。私の所属していたANA(全日空)では成田空港から、アメリカ方面はワシントン、ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ、ロスアンジェルスへ、ヨーロッパ方面ではロンドン、パリ、フランクフルトへデイリーで飛んでいた。
アメリカの西海岸へは午後の出発になるが、そのほかの便は午前中に出発する。季節によって変わるが飛行時間は12時間から14時間くらいだ。アメリカ便では離陸後、少しすると夜間飛行となり目的地へは翌日朝の到着になる。また欧州便では太陽を追いかけるフライトとなって同じ日の夕方から夜の到着となる。
それでは長距離国際線のパイロット達はどのように仕事をしているのだろうか。以前のブログ The Twilight Zone に書いたように昔は機長、副操縦士、航空機関士、ナビゲーターなど乗務していたが、現在の長距離国際線では機長資格を持つパイロットが2名、副操縦士が1名の3名でのフライトになる。これをマルチ編成と呼ぶ。通常、社歴の古い方がPIC(Pilot In Command)として責任者に、もう1名の機長がCaptain M として交代機長に指名される。
出発前のミーティングで飛行時間を6等分してそれぞれの受け持ちを決める。だいたい次の表のようになる。1ブロックは2時間から2時間半くらいだ。左席には必ず機長資格操縦士が着かなければならない。通常離着陸はPICが実施する。
成田空港出発時は、PICが左席に副操縦士が右席に着席する。離陸から巡航高度に達して水平飛行に移って約1時間の仕事だ。交代の機長は離陸の時はジャンプシートに座っているが、安定した上昇飛行に移ると休憩に入る。国際線のジャンボ機は操縦室の左後ろに2段ベッドを備えたレストルームを備えていた。急に眠れるものではないが、体を横たえてくつろいでいると休養になる。
PICの場合は、緊張する離陸から上昇して巡航高度に達して1時間程すると休憩となる。休憩が終わって次の4時間の間に食事を摂ることになる。乗員用のミールが用意されているのだが、客室のサービスが終わったCAが、ビジネスクラスのメニューで乗客がセレクトしなかったものを教えてくれる。なかなか美味しいものがあって国際線乗務の楽しみの一つだった。
「巡航中は自動操縦に任せて何もすることが無いんじゃないの?」と聞かれることが良くある。飛行機の操縦で最も難しいのが、高度を狂わせずにまっすぐに飛ぶことだ。特に空気密度の低い10000メートル以上の高度では難しくなる。オートパイロットはとても優秀な3人目のパイロットだ。どんなに頑張ってもオートパイロットには勝てない。操縦はオートパイロットに任せておいて、外部監視(これが一番大切な仕事である)経路上の気象状況の確認、エンジンや機体のモニター、燃料量のチェック、目的地空港の気象情報の入手などすることはたくさんあるのだ。
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