飛行機はなぜ揺れる?(Part2)

飛行機のはなし

Part1 で飛行機が揺れるのは、大気が渦巻いて居るところを飛行機が通過すると、その鉛直突風成分を受けて重力荷重倍数(G)が変化するからだとお話ししました。エアバス社では+1.4G以上、0.7G未満のGの変化を Excessive Load として捉えているようです。また、着陸時に1.6G~1.8Gを記録するとハードランディングとして、乗客やCAから腰痛になったとクレームの付くことがあります。

 ボーイング767に乗務していた頃、資料を見ていて、巡航速度で飛行中に8m/sの鉛直突風に遭遇すると 1G に相当するとありました。1Gの変化はシビア―タービュランスに相当し、体が浮き上がったり、床に叩きつけらりと大きなダメージを負うことになります。

 ボーイング747-400及びA320に装備されているBendix社製の気象用レーダーでは、雲中の水滴の動きをドップラー効果により検知して、5m/s以上のエリアをタービュランス・エリアとしてMagenta(赤紫色)で表示します。

自然界で強い大気の渦を発生させる現象として 積乱雲 山岳波 ジェット気流 の三個が挙げられます。

 最も危険なものが積乱雲です。国土交通省が航空関係者向けに出版しているAIM(Aeronautical Information Manual)の中に、積乱雲について次の記載があります。

「積乱雲の中での乱気流: 積乱雲の前身である雄大積雲(塔状積雲)の中でもその雲中で15~20m/sの激しい上昇流が存在し激しい乱気流を伴うことがある。最盛期の積乱雲では雲中の一部に下降流が起こり、他方上昇流もさらに強く40~45m/sにも及ぶことがある。積乱雲の中での乱気流の威力は想像以上であり、もしこの中に突入すれば航空機は致命的な損傷を受ける可能性がある」

 8m/sの突風成分で 1G のシビアタービュランスに相当するものが、積乱雲に突入すればどのような結果になるかは、想像できると思います。

AIMでは続けて「レーダー誘導中、指示された飛行方向に積乱雲がある場合、管制官にその旨を伝えて積乱雲を回避するよう自主的にヘディングの変更を要求すべきである」とあります。

 日本では、夏期に関東甲信越、中部山岳地帯、中国四国山岳地帯, 阿蘇・九重に猛烈な積乱雲が発生します。最盛期の積乱雲のトップは、軽く40,000フィートを超えます。離れたところの積乱雲の雲頂を目測で判断するのは困難です。高度をとって積乱雲を超えようとするのは危険です。

 目的地空港周辺と経路上のレーダーエコーの推移を確認しながら、早めに十分な回避経路を選択する事が大切です。上のケースで、東京から福岡に向かう場合は、早めに日本海沿いのルートに変更すると後半の飛行は楽になります。

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