二輪車や自動車の雑誌を見ていると、車に乗ってその印象を記事にするドライブインプレッションと言うのを目にする事がよくある。現在では経済性や航空需要の変化で、ほぼ絶滅してしまった4発の大型ジェット、かつて機長として乗務していたボーイング747-400を実際に操縦してみて解ったことや感じたことをフライトインプレッションとして書いてみようと思う。もう20年ほど前のことになるので曖昧な所もあると思うが、そこはご容赦を・・・
●B747は1969年2月9日の初飛行以来、747-100,-200,-300 そして-400 と改良が加えられてきた。 -300までは、操縦室の計器はアナログで、機長、副操縦士、航空機関士の3名が乗務していた。-300は2階部分が延長されただけで、基本的には大きな変更を受けていない。1990年代になるとエアバスA340やマクダネル・ダグラスMD11などが出現、古いB747は経済性や技術の面で旧式化した点が目立つようになってきた。そこでボーイング社が、今までの「クラシック」なB747(-100,-200,-300)に最新の技術を投入し、新世代機として甦らせようと開発されたのがB747-400である。
国際線用に飛行中の抵抗を減少させるウイングレットをつけた機体は、全長70.7m全幅64.9m全高19.06mとなっているが、外部点検の時など近くで見ると、本当に大きい。 そして最大離陸重量は870,000ポンド(395トン) 最大着陸重量は584,000ポンド(265トン)となっている。燃料は満タンで381,524ポンド(約173トン)積める。このとてつもなく大きく重たい飛行機を機長と 副操縦士の二人の操縦士で飛ばせるように造られている。技術の進歩は素晴らしいものだ。
さてシミュレーターでの訓練が終わり試験に合格すると、定期便でフライトする前に下地島で実機での慣熟フライトをすることになった。教官1名と訓練を受ける我々2名、たった3名で羽田から沖縄の遥か南、下地島空港に向かい、そこで離着陸訓練を実施するという、今では考えられない贅沢なものだ。始めて実機の操縦席に着いて実感したのが、その高さだ。B747-400の操縦席は地上約10メートル弱で、ビルの4,5階の高さに相当する。今まで乗っていたボーイング767やエアバスA320とは全く違う、地面や他の飛行機が皆下に見えて何か落ち着かない。
コンピューターに経路や重量などのデータを打ち込んで、出発準備は完了だ。グランドスタッフに連絡してエンジンをスタートする。APU(補助動力装置)が強力で2発づつスタートすることが出来る。コックピットではエンジンの音は静かだ。アイドルパワーだと耳を澄まさないと聞こえない程だ。
管制塔の許可を得てタクシーを開始する。なんて視界が良いんだ。誘導路がよく見える。これなら複雑な成田の誘導路も間違えることは無いだろう。さすが大型機、地上での乗り心地はゆったりしている。見晴らしの良いコックピットで、ささやくようなエンジン音を聞いていると、ジャンボジェットの魅力が伝わってくる。●
右の写真は、ワデルのワゴンと呼ばれたものでパイロットや地上スタッフが、B747の大きさや高さに慣れるために作られたものだ。ワデルというのはテストパイロットの名前だそうだ。B747の開発初期には操縦室の高さに慣れるため、このような装置が必要だったのだ。 離陸、上昇からは フライトインプレッション2に続く。
コメント