飛行機はなぜ揺れる?(1)

飛行機のはなし

 飛行機に乗っていると揺れることがよくありますね。コトコトと眠りを誘うような気持ちの良い揺れから、冷や汗が出て思わずひじ掛けを握りしめるような激しい揺れ、そして機内で『キャアー」と悲鳴のあがるような異常な揺れまでいろいろな種類があります。怖いですね、パイロットをしていた私も、激しい揺れは怖いし大嫌いでした。

 ところで飛行機はなぜ揺れるのでしょうか? 結論から言うと、大気が縦に渦巻いているところを飛行機が通過すると揺れます。少し専門的になりますが、航空力学と航空気象の面からお話ししたいと思います。下記のコラムは 「よくわかる航空力学の基本 第2版」の飛行機の構造要件からの抜粋です。

上の注は一部誤りで、1ノット【海里)は1852m/secになります。

 タービュランスの強さを示すときに、ライト、モデレート、シビア―など用いられますが、タービュランスの強度を表す物理単位は、上の分数式では n で示される突風荷重倍数になります。         静かな大気のなかを飛行している時 n は1です。分数の値が大きくなる程 n の値は大きくなり揺れは激しくなります。分子の値を小さく、分母の値を大きくすることで n の数値は小さくなります。    旅客機は n の値が +2.5から-1.0まで強度が保障されています。

 それでは分子から見ていきましょう。Kaの係数は横において、Uの垂直方向の突風速度(鉛直突風)が、タービュランスの真犯人です。U が0なら飛行機は揺れないのですから。鉛直突風は、大気が渦を巻いているところに発生します。鉛直突風の成分が大きいほど揺れは激しくなります。大気の渦に関しては、どういう所に発生していて、どれほど危険なのかは、Part 2 で解説します。

 次に飛行速度 V です。飛行速度は小さいほど、揺れは小さくなります。突然、大きく揺れた時などパイロットは条件反射的に速度を落とします。でこぼこ道に入った車と同じです。但しあまり低速で飛行すると、失速の危険性もあるので、どの飛行機も乱気流通過速度(Turbulence Penetration Speed)が定められています。

 さらに、この数式からは直線翼のレシプロ機よりも、後退角の大きなジェット旅客機の方がタービュランスに対しては有利であると示されています。

 数式の分母に W/S と言うのがあります。これは翼面荷重と呼ばれるもので、飛行機の重量を翼の面積で割って求めます。簡単に言うと重たい飛行機程、揺れには強くなります。             エアバスA320は、乱気流に遭遇すると自動的にスポイラーを立て翼面積を減らし、主翼付け根の強度を保護するLAF(Load Alleviation Function)という装置を備えていました。

 またA320では、飛行中に n の値が1.4G以上もしくは0.7G未満を2秒間感知するとExcessive Loadとして計器に表示されます。この数値が、乗客の皆さんが不安を覚え始める数値ではないかと考えています。   Part2では、実際の大気現象をもとに、タービュランスについてお話ししたいと思います。

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