航空機衝突防止装置(TCAS)

飛行機のはなし

 1971年7月30日、岩手県雫石上空での全日空ボーイング727型機と自衛隊の戦闘機F86Fの衝突を始め、1978年9月25日には南カリフォルニアのサン・ディエゴ空港へ着陸進入中のパシフィック・サウスウエスト航空ボーイング727とセスナ172が空中衝突し(写真参照)双方の乗員乗客137名と地上にいた子供2人を含む7名の方が無くなるという当時のアメリカ航空史上最悪の事故になった。          その後1986年8月31日にロサンジェルス空港へ着陸直前のアエロメヒコ航DC9とパイパーPA28とが空中衝突,2001年1月31日には駿河湾上空で日本航空のジャンボ機とDC10型機のニアミス事故、そして2002年7月1日にはドイツ南部のユーバーリンゲン上空でバシキール航空のツポレフTu-154M機とアメリカの貨物会社DHLのボーイング757型機が空中衝突など多くのの事例がある。

サンディエゴ空港のB727機衝突事故

 こう言った悲惨な衝突事故を防ぐために、我が国においては客席数が19または最大離陸重量が5700kgを超え、かつタービン発動機を装備した航空機は衝突防止装置TCASⅡ(Traffic alert and Collision Avoidance System)を装備することが義務つけられており、日本国内を飛行する旅客機はすべてその対象となっている。

 ところでTCASとはどのようなものなのか?下図は操縦室の計器に表示される一例だ。

 一般的な情報は白色で、25秒から45秒後に衝突する可能性のある、特に注意を要する航空機は黄色いTraffic Advisoryで表示され、20秒から30秒以内に衝突する可能性のある危険な航空機がある場合は、Resolution Advisoryとして上昇や降下の回避操作が、音声とともに発出される。(B747-400)

 日本航空の駿河湾上空でのケース、ユーバーリンゲンのケースではTCASの、上昇、降下の指示と管制官の指示との間に齟齬があったために発生した。現在では、パイロットはTCASの指示に優先的に即刻対応することが求められている。

(私が経験したTCAS RA,25年ほど前のことで数値には記憶違いもある)私の乗務する札幌千歳行きのエアバスA320は、快晴の青森津軽湾上空を29000フィート(8700m)で順調に飛行、右席の副操縦士に操縦を任せていた。突然TCASの [DESCENT DESCENT]「降下しろ降下しろ」と言う警報とともND(Navigational Display 自機の位置を表す計器)には、すぐ後ろに赤いマークが2個、プラス1これは100フィート上に航空機があることを指示している。一瞬、空中衝突を覚悟した。副操縦士は固まっている。[I Have Control]「自分が操縦する」と宣言して、直ちに機体を降下させた。どれ程降下したかは、覚えていないが [Clear Of Conflict]「衝突は回避された」の音声が示された。札幌コントロ―ルに、TCAS RAで降下した旨を伝え、そのままレーダー誘導を受けて千歳空港に着陸した。着陸後に、報告書を提出、重大な衝突の危険を感じた事、再発防止の観点からも調査結果の速やかな公表を依頼した。

 数日後、報告書が届きた。TCAS RA(回避操作の必要な警報)の対象となったのは、三沢基地所属の、米軍戦闘機F16の2機だった。米軍の報告によるとF16のパイロットは「訓練エリアから基地に帰るところだった。当日は雲が多く、雲を抜けたら、目の前に全日空のエアバスがいた。今後はより一層、外部監視に注意を払いたい」と言うもので、開いた口がふさがらなかった。

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